クロマツ Pinus thunbergii  (マツ科 マツ属)



 クロマツのマツカサを解剖してみた。堅くて切断しにくい。球果(マツカサ)は2年目の秋になると鱗片が開き、種子を散布する。鱗片は整然とした螺旋状に配列されている。断面を見ると、中軸があり、これから規則正しく鱗片が出ていることがわかる。球果は雌花が発達したものである。花は葉の変形であるので、この球果は1つの枝であると考えることができる。中心の軸(枝)があまり伸びず、周辺に付いていた葉が普通の針葉にはならず、幅の広い鱗片に変化していると考えればよい。
 マツカサの開閉は乾湿運動である。マツカサの中の種子が熟すと母樹からの水分供給が減少し、鱗片が根元の方から順に反り返る。開いているマツカサを水の中に浸けておくと、やがてマツカサは閉じてしまう。
 クロマツの種子は1つの鱗片に2つ形成されるが、根本の方の小さい鱗片では十分に成長できない。種子には羽根がついており、空中に放り投げるとクルクルときれいに回転する。風に種子を乗せて遠くに散布する「風散布」である。種子寿命は短く、発芽・成長できなかった種子は早期に消失してしまう。発芽は光によって促進され、緑色の光で抑制される。したがって、播種する場合には深く土を掛けると発芽しにくい。
クロマツのマツカサクロマツのマツカサ
クロマツのマツカサ:整然と螺旋状に鱗片が配列されているマツカサの断面水に浸して鱗片が閉じたマツカサ
クロマツの種子:羽根が付いている。1枚の鱗片:右側は種子を乗せてある
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