2015年の談話室

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12/26 ツル植物をしっかり観察した1年でした。

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今年の庭には6種類のツル植物が生育していた。
ゼミ出身の山尾君がツル植物に関する論文を発表したこともあって
詳細にツル植物の挙動を観察する年になった。
面白いことに、小生のゼミでは伝統的にツル植物に興味を持って
卒論のテーマに取り上げたいと考える学生が結構いる。
つい最近のゼミ生のツルに関する研究テーマは、フジに関するものであった。
これに関しては、小生が追い付いていた部分もあるし、ついていけなかった部分もあって
結構良いテーマであったのに、十分追及できなくて残念であった。

さて、今年の拙宅の庭には、6種類のツル植物が生育しており
それぞれ十分にそれぞれ特性を発揮して見せてくれる。

まずはキュウリ、長雨のためか、次々と萎縮病に罹患して枯れながら
枯れ残ったものが失地回復して繁茂し、堪能することができた。
キュウリは葉の寿命が短い。
3週間もたたずにウドンコ病が発生したりして葉の勢いがなくなってしまい、摘葉することになる。
ドンドン茎を自らの上にも伸ばし、葉を交代させて効率よく光合成をおこなう戦略らしい。
毎年思うのだが、キュウリの巻きひげは巻き付くのが下手。
市販のキュウリネットはつるつる滑るのか、イライラして巻き付けてしまう。

2人目は定番のゴーヤ(ニガウリ)。
今年は初夏の天候不順でたくさんの果実ができなかった。
普通なら、冷凍庫一杯になって、半年ほどは食べ続けるのだが、早々と除去してしまった。
植栽した3本は別々の品種であり、これに勝手に芽生えた2本を加え
5本が比較的狭い範囲でツルを伸ばしているわけだが、自らに巻き付かないどころか
違う系統のものにも、少なくとも葉には巻き付かない。
巻きひげ型ツル植物にとって、少なくとも葉が引っかかりにくくなっているのは大切なことである。

今年のヒロインはオキナワスズメウリ
南国育ちらしく、緑色濃く、暑くなるまで生長がおそいし、発芽率が低い。
巻きひげの巻き付きは下手で、登るよりも垂れ下がることが得意。
アサガオのツルに巻き付くのが大好き。
8月の終わりころになってたくさんの花が咲くようになり、節に次々と花が咲いて果実がなるので
多いものでは一つの節に5つの果実がる。
赤や緑のものが混ざってかわいい。
クリスマスのリースに使うので、ツルをできるだけ長くとる必要があり、丁寧に採取した。
ほとんどとり終わって残りを放置しておくとまた茎が伸びて枯れそうにない。
常緑であった。
霜が降りた時点でようやく枯れたが、軒下ではわずかに生き残っている。


ヤマノイモは全部掘り取って食べてしまったつもりだったが残っていたらしく
勢いのよいツルが伸びてきた。
スタートダッシュで、ある程度伸びるとおとなしくなって茂る。
土壌が浅いので、四方八方に伸びた巨大なイモと笊いっぱいのむかごがとれた。

ヨルガオは全体に大型の巻き付き型ツル。
今年は高い場所で花を咲かせたので、まじかで見ることができなかった。
摘芯すべきだった。
花は夜になって開き、早朝にしぼむので夏の間は花殻ばかり見ることになるが
秋になると朝まで開いているのでじっくりと見られる。

アサガオはこぼれ種だが、結構美しい花が咲いた。
秋になると夕方まで花が開いている。
朝青だった花が夕方にはピンク色になっているのに気付いた。
そういえば、落ちた花殻は赤味を帯びていることが多い。
ブルーイングである。

ヘクソカズラは見つけると駆除するのだが、本拠がどこにあるか発見できず、やがて再生してくる。
まっすぐ伸びる性質が強く、必要がなければ巻き付かない。
巻き付くものを探す気がないかのよう。
結構おとなしいので、繊細に伸びた茎の先端は、備前焼の花瓶によく似合う。

巻き付き型のツルは巻き付いてからどうするかにジレンマがあるはず。
巻き付きながら生長するのがベストと思えるが、そのためにはしっかりと巻き付くことはできない。
しっかりと巻き付くためには生長をストップしなければならないのである。
フジの茎はほとんどまっすぐに空中に1mほど伸び
何も巻き付くものがなければ、先端だけがコイル状になる。
巻き付く部位は先端だけなのだ。
アサガオは巻き付きながら伸びる。
支柱と茎の間には滑り機構が必要だが、下向きに生えている毛がその役割を果たしているとみている。
ヘクソカズラは毛がないので、着実にゆっくりと巻き付いていく。

他のものに頼って生きるか、自立して競争するか、どちらも大変ですね。

さて、HPが文字化けして見えないと学生が訴えてきた。
パソコンで見るには従来とおりなのだが、iPhoneなどでOSを最新バージョンにアップすると化けるらしい。
パソコンでできることがiPhoneでできないはずは無く、いずれは対応するはず
と放置するつもりであったが、試験も近くなり、講義関連のファイルだけでも対応しておかなくてはとやり始めた。
漢字コードはShift_JISですよ!という宣言文を1行入れるだけなのだが
4〜5千あると思われるファイルをすべて読み出して1行加えてセーブし
サーバーへアップロードすることとなってしまった。
一応は対応したはずですが、やり残しが必ずあると思います。
見たいところが見えなくて困っていらっしゃる場合には、お知らせください。

よいお年をお迎えください。



12/16 4月から現場復帰です。

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学部長、自然植物園長、副学長、学長と続いた管理運営業務は15年間ということになった。
この間、多くの方々にご支援いただき、またご迷惑をおかけした。
元々管理職に魅力を感じていたわけではなかったので、ゼミも講義も継続してしまい
結果として十分な指導ができず、申し訳ないことであったと思います。

次期学長は前愛媛大学の学長、柳沢康信氏。
専門は動物行動生態学であり、2代続いての生物系、生態学系の学長となります。
人口減少という環境の中、複雑系を研究対象としてきた新学長の今後の舵取りに期待したい。

さて、4月からどうするか?
この失われた15年、十分なフィールドワークができなかったという悔いが残っている。
旅行もしてみたい、とりわけ6月の北海道に行ってみたい。
盆と正月以外には行けなかった海外に・・しかし、最近は少々物騒です。

RDBの改定作業が始まりました。
グットタイミングで頑張ろうと思っています。
折しも赤磐市で生物調査の計画があり、県全体とともに赤磐市に視点を置いて、調査することになりそうです。

一人でもできる研究テーマをたくさん貯めています。
会議に制約されない現場活動ができるでしょう。

当然教育は生涯の役割です。当面、岡山理科大学で講義を行います。
今までやってきた専門の講義以外に、昔取った木根塚で、教養教育も担当することにしました。
育てていただいた大学への恩返しといった気持もあります。

ゼミはなくなりますが、今までの責任もあり、当面は指導させていただきます。
今までよりもはるかに顔を出すことが多くなると思います。

研究室のホームページ、特に植物雑学事典は消滅させるわけにはいきません。
適切なところにサーバーを設置させていただき、メインテナンスすることになります。
おそらく更新速度は設置当初の状況にまで回復するのでは、と思っています。

図鑑とガイドブックを作りたいと考えています。
図鑑は、ここ数年前からの電子出版の依頼を実現するもので、一人でも出せそうですが、
楽しいことはみんなでやりたいものです。

ガイドブックは、例えば龍ノ口山の植物(自然)といったもので
無料配布かワンコインということになるでしょう。
当面、植物と地質と遺跡といった内容が望まれますので、生物地球の皆さんのご協力が必要です。

社会貢献は、時間のある限り・・・・社会への御礼ということです。

体力は十分か?
と心配されるでしょう。今更、年寄りの冷や水で・・・・
毎日1万歩、1年で400万歩という実績を積んでおきながら
学生と山を登ると遅れぎみになるということが若干気になっていました。
頑張れるんですが、しんどくなるわけです。齢だから仕方がないですよね。

ということだったんですが「牛にひかれて善光寺参り」ならぬ
「家内に誘われて筋肉トレーニング」というのが最近のトピックスです。
家内があちらこちら痛いので鍼灸院に行くと、マッサージだけでは治らない、筋肉の強化が必要です!
ということになりました。
小生も誘われたわけですが、やってみると比較的短期間で素晴らしい効果が!
足の筋肉が強化されたので、階段は2段飛ばしが当たり前になり、
早朝の散歩はヒルクライムのクロスカントリーへと変化しました。
山歩きには精神的障壁がなくなりました。
ランニングマシンに乗るよりは、実際の山歩きの方が何倍も何十倍も楽しくて有意義です。

ということで、3〜4日出勤し、あとは山歩きといった生活になるものと予想しております。


5/12 箱根 大涌谷

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昔、植生学会だったか群落談話会のイベントだったか、箱根でのエクスカーションがあったのだが
風邪にかかって残念ながら出席できなかった。
これがちょっとしたトラウマになっていて、箱根がトゲのように突き刺さったままになっている。
そんなこともあって、まだ冬枯れの箱根で温泉につかることになった。
3月28日のことである。



ロープウエーで登っていくと峠の向こうからいきなり富士山が!
降り立った中間駅は大涌谷。
今ニュースをにぎわしている場所であった。



水蒸気が噴出している地域周辺は低木群落となっている。
植物のほとんどは落葉しているが、ノリウツギやリョウブ、アセビくらいは分かる。
このほか、サラサドウダンがあるとの看板があり、その気で見ればなるほど!であった。

駐車場から噴気の出ている場所へと荷物専用の索道が設置されており
ダンボール入りの卵が頭上を登っていき、帰りには真っ黒になった「黒卵」となって降りていく。
「くろたまご」の製造現場は硫黄で白濁した高温の池。
この池に30分ほど漬けておくと真っ黒になるとのこと。
硫化水素と鉄分が反応して黒くなるのだと思う。

さて、この場所では数メートルほどの蒸気が立ち昇っている程度で
何の不安感もなかった。小さな別府の地獄程度であった。
それがわずか一ヶ月後に山が膨らみ、ジェット並みの噴出音がするほど活発な火山活動に変化した。
立ち入り禁止になる前に行ってよかったな-と思う反面、恐ろしさを感じる。
木曽御嶽山でも噴気が激しくなるなどの前兆はあったのではないかと思うが急激な変化だったのであろう。

テレビのニュースを見るたび、手元の画像との大きな変化の大きさに驚く。
恐れを抱きつつ、怖いもの見たさである。

5/06 新緑 -みどりの日-

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「みどり」は本来「みずみずしさ」を意味し
やがて「新芽の色」を意味する言葉になったのだそうだ。
現在の「緑色」は元々「青色」と昔は表現していたということは知っていたが
不覚にも緑は新芽の色であるとは知らなかった。
「みどり」が新芽の色であれば新緑になる直前の芽だしの色
山がワラワラ笑うという状態の色であり、「萌黄」ということになる。

英語のgreenには「緑色の」、「緑におおわれた」
「青々とした」、「青野菜の」などのような緑としての意味と
これから連想される「未熟な」、「青二才」などのニュアンスが
加わっており、日本語と同じような使われかたをしていて面白い。

語源的には green は grow に通じるのだそうで(Wikipedia)
Greenは、色とともに新鮮さや生長を意味していることになる。
そのように見るとgreenも萌黄色のイメージであった
のかもしれないと想像をたくましくしてしまう。

「まだ青いな・・・」とか「青二才」は
まだ成熟していない青い果実をイメージしての言葉であるが
発展途中のとか生長過程にあるというニュアンスもある。
果実の表皮に含まれる葉緑素は
結構役割を果たしているのだそうで光合成産物は果実の肥大に
また糖度の向上にも貢献している。

強すぎる直射光が当たると強光ストレスが発生する。
光エネルギーがクロロフィルに吸収されるが
例えば二酸化炭素が不足すると
溜まったエネルギーの使いどころがなくなってしまう。
夏の昼下がり、高い気温下で水分不足の状態に陥ってしまうと
気孔は閉じざるを得ず、二酸化炭素は吸収できない。
しかし、光だけは容赦なく降り注ぐ。

このような時に強光ストレスが発生するが
これへの対処法の1つがサングラスをかけることであり
赤色のアントシアニンの含有である。
よく光が当たった果実はアントシアニンを多く含み赤くなる。
一方、葉緑素が少ない状態でもアントシアニンが目立ち
果実が熟すと葉緑素が減少して赤くなるし
新芽のように葉緑素が形成されていない場合も赤味を帯びる。

芽だし時期の萌黄色は
まず保護のためのアントシアニンを含んだ葉を作り
その後に展葉に伴って葉緑素を作り出していくということになる。
今年の山はすでに青味を増して緑いろ濃くなりつつあり
朝夕の冷え込みを除けば初夏の暑さとなっている。
サクラの開花前線の北上も最速タイ記録らしい。

さてGreenには「緑化する」以外に「人を欺く」という意味もあるらしい。
緑になりさえすればよいという「緑化」に
だまされないようにしなければならない。

1/24 今年のお正月はどこにもいかず、風邪気味で家でぐずぐずしていました。

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ところが、インフルエンザにかかってしまい、本格的に寝込むことに。
悪寒があるので掛かりつけの医院に行くと
予防注射をしているので、念のためですがと検査。
ところが見事にインフルエンザA型だったわけです。

今年のインフルエンザは予防注射が効きにくいとのこと。
結果論ですが、なんだこりゃ!
熱が出始めてぐんぐん上がり、38.5℃まで上がりましたが
薬を飲んで数時間後には平熱に。
特効薬が効いたのか、予防接種の効果があったのか?
ゆっくりと過ごした5日間でした。


いつも散歩する公園の丘は、徹底的な草刈で丸坊主。
落葉は吹き飛ばされていってしまい
落ちたドングリは吹きさらしの状態になってしまいます。



最近注目しているのがこんな環境でのコナラのドングリの発芽。
山路のそばにたくさんのドングリが落ちている。
今年は豊作であった。
しかし、見えるドングリは一つも発芽していない。



中間の、うっすらと葉を被っているドングリの中には根を出し始めているものもある。
しかし、少し伸ばしたものの乾燥で枯れてしまい、中には再チャレンジしているものもある。
ドングリの発芽には、安定的な水分が必要なことがわかる。



もちろん、土の中に埋めてやればその環境は完備されるわけであろうが
団地の中の公園に小動物が活躍してくれる可能性はない。
逆に、小生が踏みつけて土の中に押し込んでしまったものは発根している。



この筋書きを見ると、コナラはまずドングリを散布し
そのあとから布団を掛けるように葉を落としていることになる。
順番が逆であれば、発芽できる可能性は非常に低くなる。
しかし、落葉の布団が厚すぎても生長はできないであろう。
ここらがむつかしいところで、厚すぎず、薄すぎず
どこでも発芽生長できるわけではない。
因みに、昨年の実生の定着数は、最終的にゼロであった。

本日は第23回エンドレス発表会。
ゼミ、インフルエンザ蔓延の影響は大きく
ゼミ生4名のうち、発表できたのは2名という寂しさ。
おかげさんで早めに終了ということで
久々に夕方には終了するという発表会でした。

1/4 あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします

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○未年となりました。昨年は自然災害が多い年であったように思います。本年が穏やかな一年になりますようお祈りいたします。

○岡山理科大学は創立51年目の春を迎えようとしています。志願者数も連続的に伸びており、大学院生も合わせると、中国四国地区で在学生数の最も大きな大学へと発展してきました。教職員一丸となって前進する力の成果でしょう。

○50周年事業の新1号館の建設は基礎工事が終了して地下1階の床が出来つつあります。今後は急速に工事が進み、半年後には11階建て2万7千uの雄姿が半田山に姿を現すことになります。楽しみです。

○大学生の頃、学生実習で登った御嶽山が爆発したり、子供のころに遊んだ広島の山が集中豪雨でくずれたり、自然の力の大きさを感じます。万が一のことを念頭に置く必要があります。地球は活動期にはいったのでしょうか。

○昨年はカナディアンロッキーで高山を堪能しました。広大な針葉樹林に感激!でしたが、均質で単調であり、日本の自然の複雑さ、多様さを再認識することができました。

○学長でありながら講義もゼミも維持して7年の歳月が過ぎました。この1年を仕上げの年とし、やり残した仕事をやりたいと思います。

○毎日早朝に歩いたりジョッギングしていますが、昨年は落枝の様式、アスファルトの下で伸びる樹木の根、散布されたドングリの発芽条件などに興味を持ちました。毎日目的なく歩くことも面白いものです。

○環境省がモニタリングサイト1000という事業をやっています。 1000か所を100年間観察しようとするものです。若いころ、霧ケ峰の八島ヶ原湿原、日光戦場ヶ原などに設置したベルトトランセクトが役に立ちそうです。小生は岡山県新見市の鯉ヶ窪湿原を担当することになりました。久々の湿原での仕事です。3年に1度の調査ということですが、100年間という年月は気の遠くなるほど長いですね。はたして何回調査できるでしょうか・・・?

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