ツ タ  Parthenocissus tricuspidata  (ブドウ科 ツタ属) 
【ツタによる壁面緑化】
 下の画像は倉敷市のアイビースクエアのツタである。この建物は倉敷紡績の工場をホテルや結婚式場に改装したものであるが、紡績工場の時代、夏の暑さを軽減するために壁面にツタを生やしたのが始まりという。
 壁面にツタが繁茂すると、壁面への日光直射量は当然減少する。真夏の正午過ぎに壁面の温度を測ってみると、ツタが覆っていない壁面に比べ、覆っている壁面は2℃前後低かった。これは室内側からの計測データであるので外面はもっと違いが大きいのではないかと思う。コンクリートの蓄熱も大きいはずで、ツタの生育によって室内はずいぶんと過ごしやすくなっているはずである。エアコンの運転エネルギー節約効果も大変大きいものと思われる。

 近年、壁面緑化や屋上緑化が注目されているが、ツタによる壁面緑化は比較的簡便であり、容易である。しかしながら、日照条件の良くない北側壁面では成績不良であり、密に壁面を覆うほどは繁茂しない。
 壁面緑化は良いことばかりではない。壁面がツタに覆われると、虫がくる。7号館では毎年ツタが毛虫に食べられ、葉がなくなることもある。毛虫が発生するとアシナガバチやスズメバチが狩猟にやってくる。窓を開けていると研究室の中にも迷い込んでくることもある。壁面に生態系が形成されるので、ワラジムシやカタツムリなども生活しており、時として歓迎したくないムカデの来室に驚くこともある。屋上の樋への落葉の詰まりにや換気扇の換気口などが塞がれないよう、注意が必要である。ツタが生き物であるから当然であるが、自然の壁面は応分の手入れが必要である。

 ツタなどのツル植物による壁面緑化は、どの程度の高さ、あるいはどの程度の面積が緑化可能なのであろうか。水分や養分を輸送する能力には、限界があるはずである。壁面が水を含みやすいレンガなどでできておれば広い面積を、あるいは長期的に美しい状態で生育が可能であると思うが、水分を含まないコンクリートでは、限界があるのではないかと思う。特に年月が経過すると、生育がまばらになり、美的に問題が発生するようである。
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