ツ タ  Parthenocissus tricuspidata  (ブドウ科 ツタ属)
【ツタの成長】
a.茎の伸び方
 ツタの茎には長枝と短枝の2種類がある。このような2種類の枝を持つ植物はかなり多数にのぼるが、ツタはその役割分担がわかりやすい。
 ツタの茎は良く伸びる。初夏には、毎日センチ単位の伸びである。数センチから10センチ程度の間隔で葉を付け、長く伸びる茎は「長枝」である。この長枝は条件の悪い場所からの脱出や、新天地を開拓し、生育域を拡大する役割がある。この長枝は所々から枝分かれし、次第に壁面などを覆っていくが、毎年枝分かれして新しい長枝を形成すると自分で自分を覆ってしまうことになる。これは不経済であるので、いったん壁面を覆ってしまうと、以後枝は伸びなくなり、毎年新しい葉を付けるだけの長さ伸びる「短枝」となる。下の1枚目の壁面画像で、長く伸びる枝の所々に点々と存在する節が短枝である。花は長枝には形成されず、短枝にのみ形成される。長枝は光合成による利潤を茎の伸張に再投資し、拡大再生産を行うために形成されるが、短枝は光合成産物を子孫繁栄に使用している。
壁面に展開したツタの茎ツタの短枝
b.葉の展開
 壁面に展開している葉を外から眺めると、どの葉も平等に光が当たるように配列されているように見える。窓の裏側からその様子を見ると、そのような配列は当初からあったのではなく、個々の葉の位置が調整された結果であることが分かる。春に新しい葉が形成された時には葉柄は葉の長さと同じ程度であるが、次第に葉柄は長くなる。1枚1枚の葉それぞれが葉全体に光が当たるように葉柄をのばして調整するために、日の当たらない葉の葉柄が長くなってしまうのである。その結果、長いものでは40cm以上もある葉柄になってしまう。葉を付ける位置が毎年ほとんど変わらない短枝から形成される葉では、葉柄の長さを変えることによって葉の位置を調整している。
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