T.群落の構造と分布
3.日本における極相植生の分布
 
 日本においては、湿原や池・沼沢地などの限られた土地的極相を除けば、ほとんどの地域において森林が成立する。この森林植生の分布と種類を見てみよう。日本は南北に連なり、気候的には亜熱帯から亜寒帯にまたがって多様であり、植生もそれに対応している。
植生の水平分布
Fig.T-3-1.森林植生の水平分布

植生の垂直分布
Fig.T-3-2.緯度に沿った森林植生の垂直分布
OKP:岡山県の範囲

 日本の極相植生の分布を南から順に外観すると、次のようになる。
  • 常緑広葉樹林:南西諸島から本州中部の低地に分布する植生。気候的には亜熱帯から暖温帯に相当する。スダジイや様々なカシ類が優占する森林である。年間を通じて温暖な気候である地域に発達する。南に至るほど森林の構成種は多様となり、様々な植物が優占する森林となる。Fig.T-3-1では、常緑広葉樹林をさらに細分し、亜熱帯林・南部暖温帯林・北部団温帯林として図示してある。
  • 落葉広葉樹林:九州・四国・中国地方の山岳地帯から北海道・東北地方の低地に分布する植生。気候的には冷温帯に相当する。ブナミズナラなどの落葉広葉樹が優占する森林が形成される。
  • 常緑針葉樹林:四国・紀伊半島の高地の一部にもわずかに発達しているが、中部山岳地帯の高山から北海道の低地に分布する植生。気候的には亜寒帯に相当する。オオシラビソコメツガ、トウヒ、エゾマツなどの常緑針葉樹が優占する森林である。
  • 高山荒原植生:中部山岳地帯から北海道の山岳地帯の山頂付近に発達する植生。植生的には寒帯に相当するが、日本には典型的な寒帯の気候は存在せず、厳しい山岳の気象条件によって形成されたものである。コケモモアオノツガザクラ、ガンコウランなどのツツジ科の矮性低木やコマクサなどの高山植物の生育が見られる。

【参考:木曾御嶽山の植生

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